Antibacterial 抗菌とは?

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今回は,抗菌について考えてみます。

菌とは何か?

まず,抗菌の対象物である「菌」とは,何かを整理しましょう。ウイスルと菌はどう違うのでしょうか?

そのことを考えるには,生物の定義から考える必要があります。一般的には,「自己複製」「エネルギー代謝」「細胞構造」があるものを生物というと考えられています。

一方,ウイルスは、核酸(DNAやRNA)を(カプシドやエンベロープと呼ばれる)タンパク質で包んだ簡単な構造を持ちます。このような構造のために,ウイルスは,「エネルギー代謝」が出来ません。また,他の生物(宿主)の体内を利用しないと増殖出来ません。このことから,ウイルスは生物と無生物との境界に存在するものと考えられています。

図1 ウイルス、細菌、人の細胞の違い(農水省のHPより)

この様に,菌とウイルスでは異なるものと考えられています。では、「抗菌作用」があると言われるものは,ウイルスに効かないのでしょうか?・・・それは違うと思います。

抗菌作用のメカニズムが,細胞構造の細胞膜(タンパク質)を破壊することである場合,同様にウイルスを覆うタンパク質も破壊することが出来ことがあるので,対象として含まれる場合もあります。

抗菌という言葉は,菌を対象としていますが,そのメカニズムを知ることで,期待される活用方法は変わってきます。また実際に使用するにあたっては,更に,どの程度の破壊ができるかといったレベルも知ることが必要です。この点は,機会があればお話ししたいと思います。

「抗菌」と「殺菌」の違い

世の中では,「抗菌」以外に,「殺菌」「消毒」「除菌」などの言葉があります。これらは同じことを意味しているのでしょうか?

「殺菌」は,「一部または全部の細菌を死滅させる」を意味し,この言葉は,薬機法(薬事法)によって認められた医薬品や医薬部外品にしか使えません。また、「消毒」は,「病原性微生物を,死滅や除去により,無害になるまで減らし,感染力を消滅させ,毒性を無力化させること」を指し,同様に薬機法で定められた用語です。

洗剤や漂白剤などの「雑貨品」にはこれらの言葉が使用できないので,洗剤などに「殺菌」の効果がある場合は,「除菌」という表現にとどめていることもあるそうです。

具体的は,「殺菌」には,「熱殺菌」「薬剤殺菌」「高圧殺菌」「プラズマ殺菌」などがあります。

「薬剤殺菌」の代表的なものとして,エタノールと次亜塩素酸ナトリウムの殺菌メカニズムをリンクで紹介いたします。 そのメカニズムからも理解できるように,エタノールや次亜塩酸ナトリウムなどの「殺菌」はウイルスにも有効であると言われています。

一方の「抗菌」は,「菌の繁殖を防止する」という意味で使われます。経済産業省の抗菌加工製品のガイドラインでは、抗菌の対象を細菌のみとされています。

具体的は,「抗菌」には,「有機系抗菌剤」「無機系抗菌剤」があります。

「有機系抗菌剤」には,エタノールや次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系抗菌剤や過酢酸などを含む過酸化水素系抗菌剤、ヨウ素系抗菌剤などがあります。

「無機系抗菌剤」には,主に,二酸化チタンの様な「酸化物光触媒系」や銀、銅、亜鉛を含有する素材による「金属溶出(金属(イオン)担持)系」があります。

無機系抗菌剤の詳細については,以下を参照してください。

Inorganic Antibacterial Agent: 二つのタイプの抗菌剤
二種類の抗菌剤とその抗菌メカニズム「無機系抗菌剤」には,主に,二酸化チタンの様な「酸化物光触媒系」と「金属(イオン)溶出型系」があります。アナターゼ型二酸化チタンは,「酸化物光触媒系」の代表例で,紫外線にを受けることにより...

纏め

「殺菌」「抗菌」「細菌」「ウイルス」の違いを知り,その上で「殺菌」や「抗菌」のメカニズムを理解する事は,問題の解決を最適化するのに重要なことだと考え,今回は,この内容を纏めてみました。

参考資料

農林水産省.細菌とは何ですか?

細菌とは何ですか?:農林水産省

日本石鹸洗剤工業会.どこがどう違うのか・・・「滅菌」「殺菌」「除菌」「抗菌」などの用語 

日本石鹸洗剤工業会 石けん洗剤知識
石けん・洗剤について、身近な暮らしの情報から、安全・環境の話など、これは便利という情報を満載。国内大手メーカーのほとんどが加盟する団体のページです。

経済産業省.抗菌加工製品について

抗菌加工製品について(METI/経済産業省)

「生物と無生物のあいだ」という本です。興味があれば、読まれることをお奨めします。

コメント

  1. […] […]

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