自動車の軽量化は、燃費削減によりカーボンニュートラルへの貢献となる。燃費削減は、EVでも電気エネルギーが化石燃料で作られている間は、重要項目となる。車体の軽量化には、ハイテン材、アルミニウム、CFRPなどを使ったマルチマテリアル化があます。
Center for Automotive Research のTechnology Roadmapによると、自動車のマルチマテリアル化は止まるところを知らない様に思われます。
ハイテン材
強度、耐食性、成形性、表面処理性、価格において自由度が大きいことから、自動車には鉄鋼材が中心に使用されています。単に鉄鋼材を使うと軽量化が行えませんが、高強度の鉄鋼材を使えば、構造体の厚みを減らすことができ、軽量化に貢献することから、炭素、ニッケル、シリコン、マンガンなどを添加し、組織制御などを行って強度を向上させているハイテン材が注目されています。ハイテン材には、3-Gen Steelと呼ばれる700MPaを超える高張力鋼AHSS(advanced high-strength steel :DP鋼、TRIP鋼)や1GPaを超える強度を持つUHSS(Ultra high-strength(tensile) steel:ウルトラハイテン材)などが最近は、注目されています。車体の構造化には、センターピラー、フロントピラー、サイドルーフレール、 フロントルーフレール、 サイドシルなどに使われます。
アルミニウム材
アルミニウムは、軽く、耐食性に優れ、鋳造性がよいなどの特性があります。自動車のエンジンやトランスミッション、ホイールなどには鋳造品が古くから採用されていました。最近では、鋳造サスペンションなどにも活用が進んでいます。
鉄鋼材の代わりに自動車の車体に使われるものとして、マグネシウム、シリコン、銅、亜鉛などを添加して熱処理を行い強度を高めたアルミニウム合金があります。ここでは、主に5000系や6000 系(Al-Mg-Si) と呼ばれるアルミニウム合金が使われています。 6000系は、5000系に比べて成形後に SSマーク(Stretcher Strain Mark)と呼ばれる歪み模様が発生せず、塗装焼き付け時の熱処理により硬化するベークハード性を持つことなどの特徴があり、これにより、フード、ドア、フェンダー、トランクリッド、ルーフ等の外板での採用も進んでいます。
さらに近年は、車の重心から離れた箇所の軽量化が走行性を向上させると考えられており、航空機に使われている7000 系 (Al-Zn-Mg)がバンパービームなどで採用されている事例もあります。
一般社団法人日本アルミニウム協会の「自動車用材料のアルミ化による CO2削減貢献定量化調査報告書(2021 年2月)」では、1,429kg/台の自動車の基準重量に対して、2017年以降の将来には、アルミニウムが、ドア、フロントフェンダ、バンパー、サブフレーム、エンジンブロック、バッテリーケースなどに使われることで1,223kgと車重が軽減すと試算されています。これにより、基準重量の自動車に対して、約10%(計算は、アルミニウム車体の製造、使用、廃棄までのトータルで試算)のCO2削減効果が期待されています。
自動車では、美観、防錆、表面保護を考えて、アルミニウム上に塗装がされています。これらの注意事項については、以下をご覧ください。
自動車のアルミニウム合金開発の新しいアプローチについては以下をご覧ください。
アルミニウム合金の種類については、以下をご覧くささい。
マグネシウム
マグネシウムは比重が1.8とアルミニウムもより軽く、比強度・ 比剛性 (重量当たりの強度や剛性)が高く、振動や衝撃を吸収しやすい、電磁波遮蔽能が高いなどの特徴を持っています。 実用に際しては、アルミニウムと亜鉛を基本添加元素とし、強度や耐熱性などの特性を高めた合金が用いられています。 大幅な軽量化を可能にする次世代の構造材料として期待されていますが、燃えやすく、耐食性が低い、加工性が劣る、高価であるなどの課題があり、自動車車体への普及は今後のものとなっています。
CFRP
CFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、炭素繊維強化プラスチックと言われ、「強くて軽い」素材として特徴をもっています。しかし、現時点では、高価である為、スポーツカー・高級車などの一部の部品に使われるに留まっています。今後、コストが改善されれば、大きく期待出来る自動車の車体構造材になると思われます。
CFRPとアルミニウムを接合することがあります。ここでは、アルミニウムに下地処理が必要となります。これらの詳細については、ここをご覧ください。
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