Group Thinking  不合理への挑戦

組織とは,時として「頼もしいもの」であり,また,時として「不合理」な状態に陥るものでもあります。ここでは、この組織の持つ集団思考の問題について考えてみたいと思います。

注)本文では,「ある思いを共通するもの」を集団,そこに「管理機能」を持つものを組織と呼びます。

集団思考とは

仲間に気に入られたいという想いが,愚かな結果を導くことがあります。 仕事仲間を庇おうとする行動で,社会への忠誠を失う結果となることもあります。

イェール大学の実験心理学者であるIrving. L. Janisは,米国政府によるキューバ・ビックス湾侵攻事件などの諸問題の分析から,集団は8つの不合理を持つことがあると,1982年出版のGroup Thinkingの中で述べています。具体的には・・・

①集団を過大評価し,「集団は不死身」という感情をを持つ。自分達は,「失敗することが無い」「失敗しても集団は存続する」と考える。

②組織を過大評価し,「集団の定型を受け入れる様に奨励」する。これにより,自分達の行動について無反省に陥る。

③「決定を合理的なもの」と見做す。自分達の責任でその結果が生じたと考えずに,その原因を他人に転嫁する。

④競争相手を過小評価し,「その集団のモラルや規律は正しいもの」とし,客観的に見直さない。

⑤ 集団の意思決定から逸脱しないよう「自己検閲」を行う。

⑥多数派意見を「全員一致の意見」だと思いこむ。集団内の結束が強いということを信じていると,過半数でしかない意見も,全会一致の意見であると誤って考える。

⑦集団の統一を維持しようとして,不一致の兆候を示す人に,「直接圧力」を加える。

⑧集団を保護しようとして,「反論となるような情報を積極的に無視」する。

・・・といったものがあります。

組織が集団思考に陥らないために

では,組織がこの様な集団思考に陥らないためには,どうすればいいのでしょうか?

集団思考は,集団内で起こるので,これに対応するには,集団を構成する個人それぞれの倫理感が大切です。

ただ,各々に倫理についての教育を受けて人格の出来上った個々の人に,改めて正面から倫理を語り教えることは難しいものです。

私は,この様な人に対して「教える」といった行為でなく,「コミュニケーション」という行為によって,対応すべきだと考えています。

この場合の「コミュニケーション」には,「事実をベースとしたもの」と「それを実行する場合の価値をベースとしたもの」の2通りの手段があると思います。

この様なコミュニケーション手段は,客観性があり受け入れてもらい易く,その結果,相手の持つ倫理感を喚起することができるものだと思います。

今回のこの文章を作成するにあたって使用した参考文献を紹介します。

1)比屋根均,大学の学びガイド 社会人・技術者倫理入門,p137,理工図書

2)「大学講義・技術者の倫理学習要領」杉本泰治・橋本義平・安藤正博共著,丸善出版,2012年8月

3)Janis, Irving L. (1982) Groupthink: Psychological Studies of Foreign-Policy Decisions and
Fiascoes. Houghton Mifflin.

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